東京地方裁判所 平成10年(ワ)15999号 判決
原告 Aこと B
右訴訟代理人弁護士 矢田次男
同 新穂均
同 小川恵司
被告 株式会社講談社
右代表者代表取締役 野間佐和子
右訴訟代理人弁護士 河上和雄
同 的場徹
被告 麻生千晶
右訴訟代理人弁護士 満園武尚
同 満園勝美
主文
一 被告株式会社講談社は、原告に対し、四〇万円及びこれに対する平成一〇年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告麻生千晶に対する請求及び被告株式会社講談社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、原告と被告株式会社講談社との間においては、原告に生じた費用の一〇分の一を被告株式会社講談社の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告麻生千晶との間においては、全部原告の負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告に対し、各自六〇〇万円及びこれに対する平成一〇年七月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
三 仮執行宣言
第二事案の概要
本件は、週刊誌に掲載された記事により侮辱され、精神的苦痛を受けたとして、右週刊誌を発行した出版社及び右記事に引用されたコメントの筆者に対し、共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
一 争いのない前提事実
1 当事者
(一) 原告
原告は、昭和五八年ころから女優業等の芸能活動に従事していたが、昭和六二年ころ芸能界を引退し、以来株式会社Xの代表取締役としてファッションデザイン業を営んでいる者である。
原告は、昭和六二年ころ、歌手であるCことD(以下「C」という。)と婚姻し、平成一〇年四月、同人と離婚した。
(二) 被告ら
(1) 被告株式会社講談社
被告株式会社講談社(以下「被告講談社」という。)は、雑誌及び書籍の出版等を業とする株式会社であり、週刊誌「週刊現代」を発行している。
(2) 被告麻生千晶
被告麻生千晶(以下「被告麻生」という。)は、「週刊現代」を含む各種メディアにおいて執筆活動を行っている作家である。
2 記事の掲載
被告講談社は、平成一〇年五月一八日、週刊現代(平成一〇年五月三〇日号)に別紙記載の記事(以下「本件記事」という。)を掲載して発行した。
二 争点
1 本件記事により原告が侮辱され、意見ないし論評の表明としても相当性を逸脱した違法なものであるかどうか。
2 被告麻生が被告講談社と共同して不法行為責任を負うかどうか。
3 原告の被った損害額
三 争点に対する当事者の主張
1 争点1(本件記事により原告が侮辱され、意見ないし論評の表明としても相当性を逸脱した違法なものであるかどうか。)について
(原告の主張)
(一) 本件記事の内容、性質等について
まず、本件記事は「性悪」というその女性の品性に問題があるという点について「選考委員会」の委員一〇〇名が採点したとして「グランプリ」を発表するという内容であり、この企画自体、記事中に掲げられた女性を揶揄し、侮辱している。
また、本件記事の「性悪」という語は「品性が悪い」「心根が悪い」という通常の意味であって、原告を揶揄してその名誉感情を侵害するものであり、被告講談社主張のような意味に解されるものではない。
さらに、被告麻生のコメント部分である、「ハイソ家族に、ブランド大学(慶応)出身という経歴、そして美人……でもそう錯覚していたのはBと両親だけ。本物のお嬢様とは似て非なる品性を世間に公表されてしまいましたね」との部分は、前記「性悪」の意味内容である「品性が悪い」「心根が悪い」ということを表現したものであって、タイトル、見出しとあいまって原告を侮辱するものである。
したがって、本件記事が原告を著しく侮辱し、その名誉感情を害することは明らかである。
(二) 原告が一般市民であること
原告は既に芸能界を引退した一私人であって静謐な環境を求める者であって、マスコミで取り上げられることについては常々抗議している。
(三) 本件記事の相当性について
本件記事の企画及び表現内容自体原告を侮辱するものであって、「ダディ」の記載内容が真実であるか否かにかかわりなく、「人身攻撃」の典型的事案として社会的に相当な表現行為とは認められない。
(被告講談社の主張)
(一) 本件記事の伝達内容、表現について
(1) 本件記事は、言動に違和感を感じさせた女性について、その人物論を列挙した企画(以下「本件企画」という。)の一部であり、評論の根拠を明示し、識者の批判的論評を引用するとの構成により、批判的な人物論を展開するものである。
このような根拠が明示され、妥当な推論を経た批判的論評は公正な意見言明として許容されるところ、本件記事は批判的人物論として社会的許容性の範囲内である。
(2) まず、本件記事中の「性悪」という表現は、「その言動を見る限り嫌悪感なり違和感なりを感じさせる」という程度の軽い意味で使われているにすぎず、その表現自体人を傷つけることのみを目的とした侮辱的表現ではない。
つまり、本件企画に登場する女性は、何らかの事件に直面し、社会的注目を集めながらもその事件に立ち向かうある意味でのしたたかさを示した著名女性人であるところ、本件企画で用いられた「性悪」という表現は、このしたたかさゆえに前記違和感、嫌悪感を感じさせたという程度の意味にすぎないものであるから、本件記事は原告を侮辱したものとはいえない。
この程度の表現が許されないとすればおよそ批判的表現を用いた人物論評はすべて否定される。
(二) 原告に対して社会的関心が持たれている点について
原告は、一般市民ではなく、しばしばマスメディアに露出し、芸能人Cの妻として発言し、著作を刊行し、芸能活動、マスメディアによって作り上げられた自己のイメージを商品化したブランド商品を開発、販売してきた。
また、平成一〇年四月、原告はCと離婚したが、Cが執筆した書籍「ダディ」がミリオンセラーとなるなかで、原告とCの夫婦関係のあり方、原告のCに対する接し方が広く公表され、その実態に社会の注目が集まった。
したがって、原告は、私生活についての社会的批判を甘受すべき立場にある。
(三) 本件記事における論評の評価根拠事実
(1) 原告の行状、言動については、次のような各事実がCの著書(「ダデイ」)によって明らかにされた。Cがこれら事実を公表するについて、原告は反対しなかったこと等からすれば、原告はこれらの事実については、これを真実と認めているというべきである。
ア Cが飲食店で女性従業員に抱きつかれ、口紅をつけられたところ、原告がその口紅を見つけて弁明を聞くことなくCに平手打ちを加えた。
イ 女性タレントと会食したCに対し、原告が自身の履いていた靴でCの胸倉を殴打した。
ウ Cの女性関係を記述した雑誌記事を原告がCに原告の前で二度にわたって大声で朗読することを強制した。
これらは感情的な異常行動であって、原告のCに対する異常な支配意識、嫉妬心、独占欲に根ざすものであり、身勝手で独善的な性向を指し示すものといえ、これらの事実を前提とすれば、本件記事程度の記述は何ら相当性を逸脱するものではない。
(2) また、原告は、原告が芸能界を引退したと主張する時期以降も、公的、私的生活を問わず逐一報道され、原告はすすんでマスコミに露出し、その装飾品の趣味まで開示し、上品な洗練された女性を演じ続け、原告自身の半生について書かれた自著には、その旨の自意識が率直に表現されていた。そして、そのイメージを利用して、自身の名前を冠した商品を開発するなどしていた。
右のような事情の下では、被告麻生の論評の前提事実である、原告が原告自身を「ハイソな令嬢」と考えていたことが認められるか、又はそのように考えるのもやむを得ないということができる。
(四) 結論
以上のとおり、原告に社会的関心が集まり「ダディ」により公表された私生活が真実であるとすれば、原告に対して批判的人物論を展開することは公正な論評として許されるべきところ、本件記事はその表現はそもそも侮辱には当たらない上、不法行為として取り締まらなければならないほど相当性を逸脱した表現ではなく、これを取り締まるとすれば表現の自由を基調とする民主主義社会は窒息する。
2 争点2(被告麻生が被告講談社と共同して不法行為責任を負うかどうか。)について
(原告の主張)
(一) 被告麻生は、平成一〇年五月ころ、被告講談社「週刊現代」編集部久保島より「バカな男」「バカな女」に関するアンケート(以下「本件アンケート」という。)の依頼を受け、本件記事における引用とほぼ同趣旨の寸評を記載の上、これに回答した。
(二) 被告麻生は、以前にも別件で被告講談社によるアンケートを受けてこれに回答し、右回答に基づき記事が作成されたとの経験があり、本件アンケートにも、原告は、夫がひどい妻であったことを公表されたばかな女である旨の被告講談社による原告についてのコメントが付されていたのであるから、被告麻生は、本件アンケートに回答する時点で、「ひどい妻」等と原告を侮辱する内容の記事が掲載されることを当然に予想し得た。
(三) したがって、被告麻生は本件記事における同人のコメント部分を自ら記載、掲載したものと同視すべきであるから、被告講談社と客観的に関連共同性を有する不法行為を行ったものというべく、被告講談社と同等の責任を負う。
(被告麻生の主張)
(一) 被告麻生が本件アンケートに回答したことは認めるが、本件記事にコメントとして引用された部分は、アンケートの回答に付記したものを週刊現代編集部において取捨加筆し、直接取材したように表現したものである。
(二) 右のとおり、被告麻生は被告講談社の本件記事に対し素材を提供したものに過ぎず、このことをもって被告麻生が被告講談社に本件記事を書かせたことになるものではない。
3 争点3(原告の被った損害額)について
(原告の主張)
(一) 本件記事により原告は著しく名誉感情を害され、甚大な精神的損害を被った。原告は、服飾業というイメージが重視される仕事をしているだけに、仕事への悪影響も懸念されている。右損害を金銭に換算すると五〇〇万円を下らない。
また原告は本訴の提起を弁護士に依頼せざるを得なくなり、日本弁護士連合会の報酬等基準規定による報酬の支払を約したが、これによる被告らの負担すべき弁護士費用は一〇〇万円である。
よって原告は被告らに対し右損害金合計六〇〇万円の支払を求める。
(二) 原告の営む服飾業が悪影響を被ったことも原告の名誉感情侵害の重大な一要素である。
(被告らの主張)
原告の主張を争う。
なお、服飾業への影響に関する損害は名誉毀損としての損害であって侮辱による損害とはいえない(被告麻生)。
第三当裁判所の判断
一 争点1(本件記事により原告が侮辱され、意見ないし論評の表明としても相当性を逸脱した違法なものであるかどうか。)について
1 本件記事内容が侮辱的表現であるかどうかについて
本件記事が被告講談社発行の週刊現代に掲載されたことは前記のとおりであり、証拠(甲一、乙二)によれば、本件記事に関し、次のとおり認められる。
(一) すなわち、本件記事は、「性悪女グランプリ」と称して政治・芸能等の分野でマスコミにその言動が取り上げられた一〇名の著名な女性について、マスコミ関係者など一〇〇人に対するアンケート調査によって「性悪度」が高い順に順位をつけ、各女性に対して各種の寸評を加えるという企画のものである。
(二) そして、記事内容を見ると、大見出しが「’98“性悪女”グランプリ大発表」との文字が見開き二ページにわたって掲げられ、本文前の編集部のコメント部分には「嫉妬深い女に手を焼き、挙げ句には手痛いシッペ返しをくらい、女は恐いものだとシミジミ思った人も多いだろう。(以下略)」との文章が記載されている。そして、原告に関する本文中の記事は、小見出しが「離婚でバケの皮がはがれた“お嬢様”」と記載されたうえ、記事中には前記の企画にしたがって原告につき順位が五位であったことを表示する〔第5位 A〕との文字がゴシック体で表示され、被告麻生の原告に関するコメントとして「本物のお嬢様とは似て非なる品性を世間に公表されてしまいましたね」と、また、匿名のワイドショー芸能担当プロデューサーのコメントとして「Bは自分のことを芸能人よりもワンランク上の文化人だと思っているんです。(中略)アイドル時代から芸能一筋で頑張ってきたCとしては、気が休まることはなかったでしょう。」と、それぞれ記載されている。
右事実によれば、本件記事が、全体からみれば、原告について「性悪」であるとの評価を下し、これを一般に公表しようとしたものであることは明らかであるところ、「性悪」との言葉は、辞書的には「根性が悪い」という意味であり、いわば性格が良くないとの人格に対する否定的評価を表すものと言えるが、その語感は単に事実関係に基づく評価を表すにとどまらず、多分に表現対象に対する主観的な侮蔑的感情を表現するニュアンスを伴うものであり、また、本件記事全体の記載を併せ考えても、「女は恐いものだ」「バケの皮がはがれた」などの表現と相まって原告の人格ないし品性を侮辱するものとなっているものと認められ、被告が主張するような、原告の言動が違和感を与えるという程度の軽い意味にとどまるものとは到底認めることができない。
もっとも、この種の表現がいわゆるマスコミュニケーションにおいて多々用いられることがあるのは公知の事実に属し、こうした事情によって、用いられた文言の持つ語感が変化し、本来は強い侮蔑表現であった用語が軽い意味あいのものとなることはあり得ると考えられるが、本件記事で用いられた「性悪」なる表現が、社会通念により、多数人にとって侮蔑感を伴う否定的評価という要素を含まない程度のものとして認知されるに至っているとまでは認めることができない。
また、本文中の「本物のお嬢様とは似て非なる品性」とのコメント部分も、「似て非なる」と判断したのは、Cの著書(「ダデイ」)に記載された、それ自体は原告の家庭内の一エピソードというべき原告の行動に根拠を求めるものにすぎず、原告の品位等に対する否定的言辞であり、原告の名誉感情を害するものということができ、さらに、「自分のことを芸能人よりワンランク上の文化人だと思っている」以下のコメントにしても、外形上、原告が自分の人格的価値を表現者が妥当と考える格付を超えてより高い位置づけを付与させようとしているとの評価を記載したものと言えないことはないけれども、その全体の表現から見れば、原告のそうした言動が原告の虚栄心等に発するものとして原告を揶揄し、それによって名誉感情を傷つけることを目的とした表現であるというべきである。
以上によると、本件記事の内容は全体として原告の名誉感情を傷つける侮辱的なものであると認められる。
2 本件が公正な論評として相当性を有するかどうかについて
被告講談社は、本件記事は「公正な論評」に当たるから違法性がないと主張する。
確かに、評価的言論の中にはある人物に対し否定的な評価をすることがその性質上避けられないものがあって、これらすべてを侮辱に当たるものとすれば、表現の自由ひいては民主主義を侵害することとなるというべきであるから、評価的な言論のうち「公正な論評」に該当するものは十分に保護される必要がある。
しかしながら、他方において、否定的評価を下されたことによっていわれなき中傷を受けた者は法的に保護されるべきであるから、ある評価的言論が「公正な論評」に当たるというためには、その論評が正当な目的を有していると認められるばかりでなく、その目的にふさわしい社会的に是認できる相当な表現内容、形式、伝達手段でなされることが必要であると解すべきである。
そこで検討するに、被告講談社は、原告が従前より著書等により「上品な洗練された女性」という自意識を社会に向けて表現してきたものであって、原告に対して社会的な関心があることを主張する。
確かに、証拠(乙一、二、四ないし四八及び弁論の全趣旨)によれば、原告は、自ら著書(「愛される理由」)を刊行し、単にマスコミによる取材・報道の対象となったもののみならず、自ら雑誌等の取材やインタビューを受け、それらが掲載されていたことが度々あったこと、またCが著書を刊行した際には、同書がベストセラーとなったことが認められ、以上の事実からすれば、原告の言動はある程度は社会的な関心事であって、その関心を招いたのは原告にも原因の一端があったということができる。
その意味では、原告が、その言動等について報道の対象となるばかりではなく、その人格についても評価的言論の対象となりうることは否定できない。
しかしながら、本件記事の体裁ないし内容についてみると、そもそも、一〇名の女性を列挙して「性悪女グランプリ」として順位をつけるという本件の企画自体、原告を含む対象者の人物論評にとって不必要かつ不適切なものであり、論評の方法としても、Cの著書、被告麻生のコメント及び「ワイドショー芸能担当プロデューサー」の話のみを根拠に原告を「性悪」ないし「バケの皮がはがれたお嬢様」等と指摘するものであり、一方的に否定的評価を下したものと評価せざるをえず、公平な言論としての基本的な配慮を欠いたものといわざるをえない。
3 以上の事情を総合すると、本件記事は、被告講談社が主張するような「公正な論評」には当たらず、原告に対する揶揄や人身攻撃となる表現を含んでおり、その程度は社会的に是認できる相当な限度を逸脱したものとして違法なものであったと評価すべきであるから、被告講談社は原告の被った損害を賠償する責任がある。
二 争点2(被告麻生が被告講談社と共同して不法行為責任を負うかどうか。)について。
証拠(甲七、八、乙二、丙一及び弁論の全趣旨)によれば、被告講談社が本件記事の企画について行ったアンケートに際して、被告麻生はその回答用紙に原告の人格についての寸評を記載したこと、これに対して被告講談社の担当者は右被告麻生の記載を元に適宜書き直しを行い、本件記事中の被告麻生のコメントとして記載したこと、被告麻生は本件記事全体について発表以前に原稿等の形式で提示されていないことはもとより、書き直して作成された被告麻生のコメント部分すら提示されたことはないとの各事実が認められる。
ところで、本件記事中の被告麻生のコメント部分は、あたかも、被告講談社の担当者が被告麻生から口頭により聴取したものであるかのごとき体裁となっているが、これは明らかに右認定の事実に反しており、被告麻生が被告講談社のアンケートに対して記載した寸評の内容は、原告の人格に対する否定的評価を含むものであることは推認されるとしても、本件記事中の被告麻生のコメントとして記載されたものと内容的に一致するものであるとまでは、本件証拠上認め難い。
前記に判断したとおり、本件記事はその見出し部分、本文中の記載及びそれに引用された被告麻生外一名のコメント部分が一体となって原告に対する人格的な侮辱となっているものである。そうであるとすれば、被告麻生が被告講談社に対して回答した内容が本件記事中の被告麻生のコメントと一致するとまでは認められない上、被告麻生が本件記事全体の中で自己のコメントがどのように引用されるのかについての認識がない以上、被告麻生が本件記事の同人のコメント部分を自ら記載、掲載したものと同視することはできず、被告麻生が単に被告講談社のアンケートに対して応答したことのみをもって被告麻生について原告に対して公然と侮辱行為を行ったとの不法行為責任を認めることはできない。
三 争点3(原告が被った損害額)について
本件記事により原告が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は、本件記事が社会的に関心を集めた女性を特定のテーマで特集し、多数人から回収したアンケート結果に基づいて批判的論評を行うものであるから、一定の人物に対して否定的評価を行うことになっても、社会的に相当な方法でなされたものである限り適法であるところ、これを逸脱した表現方法をとってしまったものであって、専ら原告を意図的に中傷しようとの意図でなされたものとまではいえないことなどの、本件記事の目的、内容及び表現方法その他諸般の事情を考慮すると、三〇万円が相当である。
そして、本件について相当因果関係の認められる弁護士費用相当の損害は、一〇万円と認めるのが相当である。
第四結語
以上によれば、原告の請求は主文記載の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用について民訴法六一条、六四条を、仮執行宣言について同法二五九条一項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 黒津英明 裁判官 神坂尚 裁判官 松阿弥隆)
(別紙)
記事
(大見出し) ’98“性悪女”グランプリ大発表~ッ
(小見出し) 離婚でバケの皮がはがれた“お嬢様”
(本文)
【第5位 A】
元夫・Cが書いた「ダディ」のなかで恐妻ぶりを暴露されたA(33歳)。評論家の麻生千晶氏はブランド志向の“お嬢様”の素顔をこう断言する。
「ハイソ家族に、ブランド大学(慶応)出身という経歴、そして美人……でもそう錯覚していたのはBと両親だけ。本物のお嬢様とは似て非なる品性を世間に公表されてしまいましたね」
ウーン、これは手厳しい。しかし、現場で取材するベテラン記者たちの間でも、暴露本を出したCに同情的な声が圧倒的に多い。
「Bは自分のことを芸能人よりもワンランク上の文化人だと思っているんです。出演交渉のときに『私は芸能人じゃないの。文化人ランクのギャラをお願いします』と言われたプロデューサーもいますよ。アイドル時代から芸能一筋で頑張ってきたCとしては、気が休まることはなかったでしょうね」(前出・ワイドショー芸能担当プロデューサー)
この女房に“愛される理由”はあったのだろうか。